長期間にわたり精神的なストレスにさらされている人は太りやすい、という研究結果が、Obesity誌(2017年2月)に掲載されました。ストレスホルモンとして有名な「コルチゾール」と肥満が、密接な関係にあることが改めて証明されたといえます。

過去には、血液・唾液・尿などに含まれるコルチゾールの量を測定した類似研究がありますが、今回、髪の毛を使うことでコルチゾールの長期的な分泌量を正確に調べることが可能となったのです。

コルチゾールとは、ストレス時に副腎皮質から分泌されるホルモンです。
ユニバーシティー・カレッジ・ロンドンの研究では、英国に住む54才以上の男女 2,527人から2ヶ月分に相当する長さの髪の毛を採取し、そこに含まれるコルチゾールの量を測定しました。すると、髪の毛に含まれるコルチゾールの量が多い人は、腹部脂肪が多く、BMIの数値が高い(太っている)傾向を示していたのです。

BMIのカテゴリーで2度以上※の肥満に分類される人や、ウエストサイズが一定以上(男性では102cm以上、女性では88cm以上)の人は、髪の毛に含まれるコルチゾールの量が特に多かったといいます。

※BMI(ボディ・マス・インデックス)とは、体重と身長の関係から人の肥満度を示す体格指数のこと。日本肥満学会では、統計的にもっとも病気にかかりにくいBMI指数22を標準体重として、25以上の場合を肥満1度、30以上が肥満2度以上としています。

ストレス反応として、コルチゾールは筋肉を分解してブドウ糖に変える(糖新生)、インスリンの働きを低下させる、タンパク質合成を抑制するなどの働きで、ストレス時に必要なエネルギー確保に働きます(炎症抑制や血液凝固を促進する働きも併せ持ちます)。

こうした反応は短期的には体を守るための大切な働きなのですが、長期間コルチゾールの分泌がつづくと、過剰なエネルギーの蓄積が心身に影響をおよぼし始めます。筋肉量が減ることに加え、DHEA、成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモンの分泌も減り、基礎代謝が低下し、太りやすくもなります。

現に、Biological Psychiatry(2014年7月)掲載のオハイオ州立大学の研究では、ストレスによって、代謝が鈍化することが裏付けられています。

同研究では、食事前の24時間にストレスを感じていた女性では、食後7時間におけるカロリー消費量が、ストレスがなかった女性に比べて平均で104kcal も減っていたといいます。
研究グループの推算によると、この104kcal という数字は、1年間に換算すると体重約5kgにも相当します。つまり、ストレスを感じているだけで、年間5キロも太るということ!

さらに、ストレスを感じていた女性のインスリン分泌量は増えていました。
インスリンは血液中の糖を細胞が取り込むように作用するホルモンです。ストレス時には血糖値が高くなり、通常以上にインスリンが分泌されるものの、コルチゾールの作用で糖は細胞内に取り込まれず、脂肪合成に拍車がかかることになるのです。

長期的にストレサー(ストレス要因)にさらされつづけると、もともと自分の体を守るための重要な反応が逆作用することになり、大きな代償を払うことになります。余分な脂肪の蓄積も、その一つ。スリムで健康的なナイスボディの維持にも、ストレスケアには気をくばりたいですね。

参考サイト:
ストレスの日々が続くと太りやすい?
ストレスにより消費カロリーが減り、太りやすくなる