近年、炎症を促進する食品への関心が強まっているようです。うつ病にも、食品による炎症が関与している可能性が高いことがわかってきました。

Preventive Medicine(2017年3月)に掲載されたウィスコンシン大学マディソン校の研究では、炎症を促進する食生活を送っている人は、抑うつや精神的苦悩が生じることが多いとしています。

そもそも炎症とは、体内の病原体や有害物質に対して免疫系が引き起こす自然免疫反応の一部です。傷の治癒を促し、また、病原菌の抑制に役立ちます。

しかし、炎症は健全な組織まで傷つけてしまうので、感染症や怪我でなくてもつづく慢性的な炎症は、体にとってマイナス作用します。慢性的な炎症は、ガン・糖尿病・心臓疾患・リウマチ・抑うつ病・アルツハイマー病など、さまざまな病気の一因になると考えられています。

慢性炎症の原因となるのは、体内から排除されずに残っている病原体、有害物質をはじめ、免疫系の異常、運動不足、肥満、遺伝的体質、加齢などですが、食事内容も大きく影響していることがわかってきました。

食品ごとの炎症促進度は、1950~2010年までに発表された 1,943の研究に基づき、2014年にサウス・カロライナ大学の研究チームが、「食事炎症指数(dietary inflammatory index、DII)」としてスコア化。45種類の栄養素や食品それぞれについて、人体の炎症を促進するか軽減するかを数値で表しました。スコアがプラスだと炎症を促進する作用があり(健康に悪い)、マイナスだと抗炎症作用がある(健康に良い)ということになります。

ウィスコンシン大学マディソン校の研究では、米国に住む20歳以上の男女約1万1千人をDIIのスコアに応じてデータ全体を5つのグループに分け、DIIスコアと抑うつ・不安感との関係を調べました。その結果、DIIスコアが最も高かった(炎症を促進する食生活だった)グループは、スコアが最も低かったグループに比べて抑うつのリスクが(オッズ比で)2.26倍、精神的苦悩が頻繁に生じるリスクが、1.81倍も高くなりました。

British Journal of Nutrition(2016年)に掲載されたオーストラリアの研究でも、平均年齢50歳超の女性6千5百人ほどのデータを分析したところ、DIIスコアが高いと、うつ病のリスクが20%ほど高いという結果※が出ています。
※英国国立精神保健研究所が開発した、「うつ病自己評価尺度・CES-D10」に基づく結果。

さらに、
“Archive of Iranian Medicine”(2017年)に掲載されたイランの研究では、15~18歳の女子299人のデータを分析。DIIスコアが高いと精神的ストレスを抱えるリスクが3倍以上であると結論づけています。

野菜・果物(炎症を軽減する)の摂取量が多いと精神的苦悩が少なく、逆に幸福感を感じることが多いことや、ハンバーガーやピザなどのファーストフード/ジャンクフード(炎症を促進する)をよく食べる人は、うつ病のリスクが高いなどの研究データもあることから、食品による慢性炎症が精神に影響を与えることは、間違いないといえそうです。

参考サイト:
炎症を促進する食生活は精神衛生に良くない?
食事炎症指数(DII)について