6月14日の朝刊で、「カフェイン中毒 3人死亡、11~15年度 101人搬送」と報じられ、これを受けて、各局のモーニングショーやアフタヌーンショーなどのテレビ番組では、「カフェイン中毒者が急増中」「過剰摂取には注意」ということが取りあげられていました。

カフェインが多く含まれるエネジードリンク類を多飲する若者の依存症や中毒が問題視されていますが、若者あらずとも、集中力が途切れたとき、コーヒーを飲んでちょっと一服、というのは、よく目にする光景です。コーヒーにはカフェインが含まれていますので、眠気覚ましや疲れとりのために飲んでいる人も多いでしょう。

しかし、実は、ストレス時のカフェイン摂取は、体にとって最悪の選択。なぜなら、カフェインを摂取すると、安静時のコルチゾールとアドレナリン値を強いストレスを受けたときと同レベルまで上昇させることがわかっているからです。(William R. Lovallo et al. 2006)

カフェインは、HPA軸(視床下部→下垂体→副腎:ストレス時に体内でおこるストレス応答)を刺激し、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を招きます。また、カフェインは、脳のブレーキに相当するアデノシンの働きを抑制することで、ドーパミンやアドレナリンレベルが上がり、脳を興奮させます。つまり、カフェイン摂取は、体にとってはストレスそのものなのです。

カフェインは脳を興奮させるため、一見眠気や疲れがとれたように感じられますが、疲れて休みたがっている脳にムチをうっているようなもの。しかも、依存性があるので、同じ効果を得るために、摂取量をどんどん増やしていかざるを得なくなります。

カフェインは、栄養ドリンク類やコーヒーばかりでなく、紅茶や緑茶、コークやチョコレート、さらには、鎮痛剤などのクスリにも含まれており、知らず知らずのうちに摂りすぎてしまうこともあるので注意が必要です。

仕事などに対する意欲を回復させたいなら、カフェイン摂取に勝るのが「階段運動」というのは、ジョージア大学身体運動学部のオコナー教授。

学術誌Physiology and Behavior(2017年4月)に発表された研究では、日常的にあまりカフェインをとっていない、あまりエクササイズをしていない、平均睡眠時間が6.5時間の女子大生を被験者とし、カフェインの摂取、プラセボの摂取、あるいは階段の昇降運動(ゆっくりペースで10分程度、累計30階分ほどを上がり降りする)という3つの行動をしてもらいました。

その結果、注意力や記憶力には大きな差は出なかったものの、カフェインを摂取したときよりも、よりエネルギーがあふれ、活力が増し、作業へのモチベーションが向上したといいます。

最近は無理に覚醒させるよりも、逆に10~15分程度の仮眠をとったほうが、集中力やパーフォーマンスが上がるというデータも複数報告されています。

集中力がとぎれてきたとき、10分間程度の階段上り下り運動をするか、仮眠をとるかは、あなた次第。でも、くれぐれもコーヒー(そのほかカフェイン飲料)のがぶ飲みだけは、やめてくださいね。

『食べ物を変えれば脳が変わる』PHP新書(生田哲著)
Stair walking is more energizing than low dose caffeine
Skip the caffeine, opt for the stairs to feel more energized