「新型コロナウイルス感染者が増加!」。日々くりかえされる報道に、「コロナはいったい何時になったら収束するのだろうか?」と不安を募らせてはいませんか?すでに新型コロナウイルスとの戦いは、「ウイルスとの共存」という次の段階にきており、長期戦を覚悟しなければならない状況にあります。

今年の4月にはハーバード大学公衆衛生大学院の研究チームによって、「集中治療の受け入れが大幅に増える、もしくは有効な治療やワクチンが使用されはじめなければ、ソーシャルディスタンス(人と一定の距離をとること)を2022年まで継続する必要があるだろう」とすでに発表していました(1)。

長期化を覚悟しなければならないのであれば、この「新型コロナウイルスとの共存」という事実を前向きにとらえ、日々の生活習慣、そして食生活を見直す機会にしてはどうでしょうか?

ホリスティック栄養学では、栄養素がそぎ落とされた加工品類は極力控え、ビタミン、ミネラル、食物繊維などが豊富なホールフード Whole food(全体食/自然食)を選択することを推奨しています。そして、ストレスを増幅してしまう食物を避けることを勧めています。これにはカフェイン、砂糖、小麦粉、乳製品、そしてアルコールなどが含まれます。

しかし便利で手ごろな食品が増えた今、日本でも「ホールフード(全体食/自然食」とはかけ離れた「ウエスタンダイエット(欧米食)」が増えてきました。ウエスタンダイエットは、乳製品や肉(飽和脂肪酸)、砂糖、小麦製品や白米(精製された炭水化物)を日常的に摂取する食生活の総称であり、肥満や糖尿病患者の増加に関係しているとされます。

新型コロナウイルスとの共存を考えるうえで、免疫機能を最適な状態に保つことが必須ですが、ウエスタンダイエットは、この免疫機能に悪影響を与える可能性があることも分かってきました。

ウエスタンダイエット、新型コロナウイルス感染にともなう長期的な影響

ウエスタンダイエットが肥満の増加に関与していることは、さまざまな研究から明らかになっています(2) 。そしてこの肥満が、新型コロナウイルス感染症の重篤化に関係しているとする多くのデータが発表されています。

ニューヨークの医師たちの報告によると、60歳以下の新型コロナウイルス感染患者のうち、BMI(ボディマス指数)が30未満の人に比べ、BMIが30-34の人は1.8倍、そしてBMIが35以上の人は3.6倍の確率で重篤化していました(3)。

この肥満と新型コロナウイルス感染リスクの関係を重く見た英国政府は、2020年7月27日に世界に先駆けて、新しい政策の導入を発表しました。これにより、糖質、脂質、塩分を多く含む食品について、広告や販売方法が規制されることになります。新型コロナウイルスの脅威から身を守るためには、国が一団となって減量に取り組む必要があるというのです。

さらに免疫機能に関する米国オハイオ州大学の研究によると、ウエスタンダイエット、特に飽和脂肪酸の摂りすぎは、自然免疫の異常な反応を引き起こすとともに、獲得免疫のTリンパ球とBリンパ球の働きを弱めてしまうといいます。その結果、慢性的な炎症やウイルス病原体に対する免疫を極端に阻害するとしています(4)。

また飽和脂肪酸を多く摂取したネズミは、インフルエンザ感染により肺の病気が多発し、獲得免疫が働くまでに長い時間を必要とすることが分かっており、これは新型コロナウイルス感染にも当てはまる可能性が大きいとしています。

新型コロナウイルス感染の重篤者は、T細胞及びB細胞の数が極端に少なかったという結果も出ており、ウエスタンダイエットとの間に何らかの関係があることが示唆されます。

ウエスタンダイエットによって引き起こされる肥満、そして免疫機能の低下は、新型コロナウイルス感染の大きなリスクとなります。さらに新型コロナウイルスに感染した場合、回復した後でも長期にわたる肺のダメージや神経系の病(認知症・アルツハイマー症)を誘発する可能性があることから、食生活を見直すことは感染予防にとどまらず、今後の健康維持を考えるうえでも重要です。



今の食生活を知るために、食事を記録することからスタート

まずは、自分の食事を記録することからスタートしてみてください。いつ・何を・どれくらい食べたかをわかるようにすることで、何を変えたら良いかが見えてくるはずです。

昨今はスマートフォンなどのモバイル機器が普及し、簡単に写真をとって保管したり、食事管理用のアプリも利用でき、何を食べたか忘れずに記録することができます。カロリー計算などを加えると、時間がかかりすぎて長続きしない可能性がありますので、無理のないやり方を選んでください。

そして最初の2週間の記録を見直し、自分に以下のような質問をしてみてください。

★ ストレスの悪化を招く食品 (カフェイン・砂糖・小麦粉・乳製品・アルコールなど)は摂りすぎていないか? コーヒーは一日何杯飲んでいる?デザートや清涼飲料水は?パンやパスタなどの小麦製品は?
★ 植物性のタンパク質(大豆製品など)と動物性のタンパク質(肉・卵)をバランスよく食べている?
★ トランス脂肪酸(揚げ物・マーガリン・ポテトチップ)はどのくらい食べている?
★ 加工食品はどのくらい食べている?

見直しが終わったら、できるところから変えていきましょう。例えば、おやつはポテトチップのかわりにミネラルが豊富なくるみやアーモンドなどにしてみる。魚のフライは焼き魚にかえてみる。緑黄色野菜(ビタミン)やキノコ(食物繊維)などを食事に加える・・・など。ほんのちょっとしたことからで、いいのです。

食事の記録、見直し、そしてホールフードをメニューに加える。これを繰り返していくうちに、健康的な食生活が身についてくるはずです。また食事内容とそのときの体調の変化を照らし合わせることで、食事を体調管理に役立てることができます。

新型コロナウイルスとの共存の生活はまだ始まったばかりです。自分にあった最善の対策を考える柔軟性、そしてストレスをためないための食生活や生活習慣を少しでも早く身に着けることが必要なのかもしれません。

著者: 豊田 幸代(認定ストレスニュートリショニスト、認定ホリスティックプラクティショナー)

1. Kissler et al., Science 368, 860–868 (2020) 22 May 2020. Projecting the transmission dynamics of SARS-CoV-2 through the post pandemic period

2.Cordain, L., Eaton, S.B., Sebastian, A., Mann, N., Lindeberg, S., Watkins, B.A., O’Keefe,J.H., Brand-Miller, J., 2005. Origins and evolution of the Western diet: health implications for the 21st century. Am. J. Clin. Nutr.
https://doi.org/10.1093/ajcn.81.2.341.

3.Lighter J, Phillips M, Hochman S, Sterling S, Johnson D, Francois F, Stachel A. Obesity in patients younger than 60 years is a risk factor for COVID-19 hospital admission [published online April 9, 2020]. Clin Infect Dis. 2020. doi:10.1093/cid/ciaa415. https://academic.oup.com/cid/advance-article/doi/10.1093/cid/ciaa415/5818333

4.Michael J. Butler and Ruth M. Barrientos, Brain, Behavior, and Immunity
https://doi.org/10.1016/j.bbi.2020.04.040