Karoshi(過労死)」という日本語が海外でもそのまま使われているように、日本人はワーカホリック(仕事中毒)というイメージが世界でも根付いているようです。

日本の労働基準法で定められている「法定労働時間」は、1日8時間、週40時間。時間外労働(残業)については、厚生労働省の通達により1か月で45時間という上限が定められています。上限めいっぱいまで働くとすると、1週間あたり約50時間。ちなみに、国際的ガイドラインでは、1週間あたりの労働時間は48時間までとされています。

過剰な労働時間といえば、大手企業従業員の過労死自殺のニュースが記憶に新しいですね。いくつか基準がありますが、月に約80時間を超える残業(約3か月に渡り)を「過労死ライン」と呼びます。労働時間が長引くことで、ストレスや疲れから精神状態に悪影響を与え、結果としてうつ病などの精神障害を引き起こすことが問題視され、メディアでも連日大きくとりあげられました。

ところが、過労死ラインよりもずっと低い労働時間でも、健康に悪影響を与えることがわかってきたのです。Social Science & Medicine誌に掲載された研究結果よると、精神面に悪影響が生じる恐れがあるのは、1週間あたりの労働時間が39時間以上の場合。オーストラリア国立大学の研究チームが、24~65才のオーストラリア人男女8千人のデータを調べたところ、1週間あたりの労働時間が39時間を超えると精神面の健康状態が損なわれていたのです!

女性の方が負担が大きい家事や育児といった仕事の量を考慮すると、1週間あたりの適切な労働時間は、男性では43.5時間以内、女性では38時間以内であるという結果になったといいます。

仕事の影響は精神面だけではありません。

カナダのケベック大学の最近の研究では、仕事で長期間にわたりストレスを感じている人は、ガンのリスクが高まることが判明。15年以上にわたりストレスが多い仕事に就いていた人は、5種類のガンの発症リスクが増加していました。

リスクの増加幅は、肺ガンが33%、結腸ガンが51%、膀胱ガンが37%、直腸ガンが52%、そして胃ガンが53%。そのうち、膀胱ガンを除く4種類のガンでストレスが多い期間とリスクが比例したといいます。また、同じ人でも、仕事が変わるとストレスの程度が変わることもわかりました。

日本人の20歳代後半から40歳代前半の労働者の約15~20%は、週に60時間以上働いているという統計もあり(総務省「労働力調査」)、私たち日本人をとりまく労働条件は、決して楽ではありません。仕事に夢中になるあまり、健康を害しては元も子もありません。仕事の量を減らすことや、堂々と休みをとることが難しい環境であっても、軽い運動やリラクゼーションを心がけ、栄養面で体と心をケアしていくことは、できるはず。仕事のストレスから体を守るすべを身につけたいですね。

参考サイト:
総務省 労働調査
1週間あたりの労働時間が39時間を超えると精神衛生に悪影響
“Social Science & Medicine” (February 2017)
仕事のストレスで5種類のガンのリスクが増加